「バナッハ=タルスキの逆説 豆と太陽は同じ大きさ?」読了。
これで長年の謎がひとつ解けました。
…。
すいません。嘘つきました。一読で解けるほど容易ではないです。
でも一方で、思っていたような複雑さはなく、むしろシンプルなぐらいなんじゃないでしょうか(数学に詳しいわけではないですけれど…)。
目次。
見てのとおり8章構成ですが数学的な話題に直接触れているのは中央の4章。第3章で集合論や写像と言った道具立て、第4章で部分と全体が一対一に対応する無限集合の妙や大きさ(測度)はないのに実数と同じ濃度をもつ「カントールの塵」といった話題、第5章で定理を証明し、第6章では定理の解釈について取り上げています。
実のところ一番驚いたのは第7章で、素粒子の振る舞い(生成)とこの定理とのあいだに類似性があるというくだり。あくまで類似性があるというだけで実際に関係があるかどうかわかってはいないものの、純粋に数学上だけの定理と思っていたものが、実世界の振る舞いを表現している可能性があるというのはやはり驚きです。
ところでどこでこの定理に出会ったかというと
ルーディ・ラッカーの著作の中に「ホワイト・ライト」という作品があります。ラッカーの処女作です。
この作品の原著には副題がついていて、原題は“White Light, or What is Cantor's Continuum Problem?”(ホワイト・ライト、あるいはカントールの連続体問題とは何か?)*1。主人公が連続体問題を解こうとして無限が実在する世界に入り込み右往左往する話で、ヒルベルトのホテルが実際の建物として出てきたりします(で、満室の所に新しいお客がきて…というお約束も)。
この小説の終盤で主人公がひとつの球体を手にします。その球体はぶつけるといくつかの部分にわかれ、これを組み立てなおしたらふたつの球体になってしまいます。手作業で定理の証明ができました(笑)。
定理との出会いがこんなだったので手を出せずにいたのですが、昨年末に本書が出て本屋にいくたびに気になっていて、今回手に入れようやく読了した次第。そうしたら。数学者としてのラッカーの著作「無限と心―無限の科学と哲学」の内容に触れられていて、ぐるっと回って同じ所に着地した気分。
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*1:でもAmazon.comのLOOK INSIDE!で見てみてもこの副題が見当たらない…。版を重ねるうちに削除されたのかな?