エンジニアのソフトウェア的愛情

または私は如何にして心配するのを止めてプログラムを・愛する・ようになったか

ないものが見える、ないものを視る

不完全な資料から、設計書を書き起こす人がいます。どうやってその資料からそんなふうに設計したのか、と訊いてみると。関連する資料から、従来の設計から、過去の経験から、そして想像から、不完全な資料の不完全さを補って設計書を書いていました。なぜ、それらの情報を使うのか、と訊いてみると。明確な答えはありませんでした。知らず知らずのうちに、足りない情報を補っていた様子。「ないものが見える」状態。もともとないものですから、誤りも気がつきません。そう見えることが、誤りだということも。

不完全な資料を見たとき、それが不完全だとわかるのは、きっと易しくないのでしょう。書かれた誤りは見つけやすいものですが、書かれていないという誤りは、書かれたことからたどって見つけなければなりません。柄の背景の地のように。

ないところに何かを見てしまうか、ないことを視ることができるか、知っていても説明することは、説明できても理解させることは、容易ではないようです。